「笑里…1つだけ聞きたいんだけど、いいかな?」



静かな時間
その時間を破ったのは友恵だった。


あたしはそっと笑里から身体を離す。
笑里はきょんと、不思議そうに首を傾げた。



「何?」



「蓮先輩が言ってた、『色々あった』って何?それだけじゃ…ないよね?」



友恵のその言葉に、笑里は表情を曇らせる。
あたしもはっきり覚えている。
蓮先輩は確かにそう言っていた。



「龍先輩に聞いたら…笑里が話すまで待ってあげてほしいって言われたの」



「…龍くんに聞いたんだ」



「悪かったと思ってる。だけど…一人で抱えてても…あたし達は助けてあげられないから…」



それはあたしも友恵と同じ気持ちだった。
友達だから助けたい。
笑里が苦しんでいるなら…



笑里は何でも一人で抱え込んじゃうんだよね。
でもそれは…龍先輩も同じだと思う。



二人は…何処か似ている。
もしかしたら…龍先輩と笑里の苦しみは同じなのかな?



笑里は、はぁーっと長い息を吐く。



「…龍くんとお姉ちゃんが付き合って…この高校に入って、二人は結婚の話をしてたの。あたしもそのこと知っていて…龍くんの事、ちゃんと諦めないとって思ってた。二人が幸せならいいやって…でも、自分の想いを伝える勇気はなかった。だから…龍くんに言わずに、この想いを捨てようって…」



笑里の悲しい想ってが伝わってくる。
ずっと好きだった人を諦めなきゃいけない。



だって、好きになった人はお姉ちゃんの彼氏で…
幼い頃から想い続けて来た想いは簡単には消せない。



なのに…笑里は告げることもせずに諦めようとしたんだね。