杏桜(きょうおう)高校
それがあたし達が今日から通う高校
桜の凄く綺麗な高校
校則は厳しくなく、自由な校風が魅力的だ。
窓の外に咲く桜の花は、まるで祝福しているかのように、風に乗って舞う。
友恵がすたすたと足早に歩いている後ろで、あたしは窓の外を眺めながらゆっくりと歩いていた。
その時、あたしの目は桜の木ではなく、桜の木に寄り掛かっている男の子に向いていた。
あの男の子、格好良かったなぁ…
あたしはそんなことを考えながら、友恵の何気ない話を聞いていた。
友恵の話に適当に相槌を打っていると、友恵が眉をひそめる。
「朱羅…ちゃんと聞いてる?」
「え?う、うん…」
あたしの煮え切らない返事に、友恵はハァーッと溜め息をついた。
「教室入る前から変だよ?何か遭ったの?」
「なんか遭ったっていうか…」
あたしは友恵に話そうか迷ってしまった。
友恵は男の子に興味がない。
あたしが見た男の子の話をしても、興味を示さないだろう。
そう思ったあたしは、何も言わないことにした。
「気にしないで?どうでもいいことだから」
「…ならいいけど」
友恵はそういっていたけど、どこか不満げだった。
あたしは心の中で、友恵にゴメンと謝った。
「…体育館に行くってさ。早く行こう?」
「うん…」
ただでさえ、口数の少ない友恵と歩くのは、今は気まずかった。
あたしが話せば良かったんだと思う。
だけど、あたしは話そうとしなかった。
友恵に話しても意味ない。
どうせ、興味ないだろうと勝手に思って。

