僕らは傷つきながら恋をする。




「…誰だ?」



聞き覚えのある声があたしの耳に届く。
目線を動かすと、見覚えのある、ある人のが視界に入る。



「…え」



あたしの目の先にいたのは、入学式に中庭で見た、あの人だった。
一目で心を奪われた。
胸がドクンドクンと高鳴る。



「…っ…!」



声を出すそうとしたけれど、何故か出ない。
嬉しさからなのか…緊張からなのか…。
あと一歩のところで声が出ない。



「確か…笑里の…」



「…え?」



どうして…笑里のことを知っているんだろう。
笑里の知り合い?
あたしが何も言わずにいると、彼は苦笑する。



「…笑里の兄ちゃんって言えば分かる?」



「龍…先輩?」



初めてみた。
フードで顔を見たことなんてない。
さっきの試合だって…一人だけフードをかぶっていた。



中庭で見たあの人が…龍先輩だった?
この胸の鼓動も…龍先輩のせい?
だとしたら…あたしは龍先輩に恋してるの?



そんなわけない。
だって…大事な大事な友達の好きな人だよ?
好きになるなんてありえない。
第一印象だって、あたしのタイプじゃなかった。



あたしが黙っているのを見て、龍先輩は肩をすくめる。



「俺っていうのが意外か?」



「そ、そういうわけじゃ…」



そういうわけではない。
驚いているだけ。



あたしの一目ぼれした相手が、龍先輩だったなんて…