友恵は不安そうに、笑みを引き攣らせていた。
そんな友恵と正反対に、笑里は少し楽しそうだった。



「蓮くん、わざわざありがと。…龍くんも。心配して来てくれたんでしょ?」



笑里がにっこりと微笑み、二人を交互に見ると、蓮先輩は照れたように頭の後ろを掻いていた。



「ま…そんなとこかな」

「蓮、そろそろ行こうぜ。遅くなるとあいつが怒るぞ。じゃあ…な、笑里」



「龍くんっ!」



先に体育館に向かおうとする龍先輩の名を笑里は叫ぶ。



龍先輩はピタリと足を止める。
そんな龍先輩の背中に笑里は微笑みかける。



「龍くんがバスケするの…楽しみにしているからね」



笑里の言葉に龍先輩はひらひらと手を振り、蓮先輩を連れて歩いて行った。



そんな龍先輩の背中を、笑里はどこか嬉しそうに見ていた。



そんな笑里を見て、あたしは違和感を感じた。



笑里が龍先輩と話しているとき、見ているとき、どこか違っている。



蓮先輩といるときと…何かが違う。
あれは多分……



「じゃ、あたしたちも行こっか」



「う、うん」



ねぇ…笑里
もしかして笑里…龍先輩のこと…



どこか嬉しそうにする笑里を横目で見ながら、あたしはそんなことを考えていた。