新しい制服に袖を通すと、自然に笑みが零れた。
今日で高校生なんだと思うと、嬉しくて堪らない。
今日の為に伸ばした髪を櫛で梳く。
中学生の時、短かった髪はもう胸の辺りまで伸びていた。
少しくすぐったい気もする。
髪を伸ばしただけで、大人っぽくなった気がした。
大きな鏡の前でくるくる回っていると、まだ真新しい携帯電話のランプが光り、着信音が鳴る。
携帯を急いで手に取り、電話に出ると、聞き覚えのある声が叱声を浴びせる。
「朱羅っ!!いつまで待たせる気!?もう行かないと間に合わないよ!!」
それは幼なじみで親友の森本 友恵からの怒りの電話だった。
慌てて、電話口で謝ると友恵から溜め息が洩れた。
「早く下に降りてきて。入学初日から遅刻なんてしたくないからね」
ブチッと電話が切れ、ツーツーと機械音が鳴る。
急いで身だしなみを整え、スクールバッグを持って自分の部屋を飛び出した。
バタバタと階段を下り、リビングに行くとむすっと不機嫌な友恵が待っていた。
「ごめん、友恵!!何分くらい待ってた?」
「…20分くらい。早く行こう?」
「ホントにごめんねっ!」
あたしはテーブルに置かれていたパンを手に取り、友恵を促す。
友恵は出されたお茶を飲みきり、キッチンにいるあたしの母親にお礼を言うと、つかつかと玄関のほうに向かった。