「…朱羅」
龍先輩が静かにあたしの名前を呼ぶ。
あたしはただ夕日を眺める。
「俺も…朱羅といて楽しかった。それは本当。笑花がいなくて…陰っていた俺の世界が…朱羅といて光が射した。…ありがとう」
龍先輩のありがとうが…
あたしの心を揺さぶりそうになる。
嬉しかった。
あたしがいたことで、龍先輩の力になれていたことが…
『楽しかった』その言葉が何よりも嬉しかった。
龍先輩はブランコから立ちあがる。
先輩の大きな影にあたしの身体は包まれる。
「朱羅…好きって言ってくれて…嬉しかった」
呟くような声が…
はっきりとあたしの耳には聞こえた。
涙が溢れてくる。
あたしは唇を噛み、涙を懸命にこらえた。
「朱羅…ありがとう」
その一言が…
あたしには最高に嬉しかった。
恋は実らなかった。
だけど…
龍先輩を好きになったこと
想いを告げたことに後悔はしていない。
龍先輩…大好きです…。
どうか…幸せになって。
そして…どうか、次の恋は上手くいきますように…
真っ赤に浮かぶ、夕日を見つめながらそう祈った。
龍先輩と見た最後の夕日は…涙で静かに揺らいでいた。

