「さっ、泣き止んで…藤倉さんの所に戻りなさいな。心配して捜し回ってるわよ」


「は、はい。す、すみませんでした」


「ううん。貴女を不安にさせたのは私だもの。ごめんね」


「い、いえ。貴女には関係ないです」


私が浅はかな馬鹿です。


「フフフ…貴女、ホントに可愛いわね」


「か、可愛くないです」


な、何を云うんですか!


「フフフ…あ、私の大事な人ね」


「はい」


「さっきピアノを弾いてた人」


「えっ?」


「結婚してもうすぐ一年」


「結婚」


「そうよ。私もヤキモチ妬きなの。ピアニストってモテるから結婚したの。ピアニストと歌手だからいつも一緒にいられるでしょ」


私にウインク


「藤倉さんと幸せになりなさいよ」


「は、はい。ありがとうございます」


「私も負けずに幸せになるから」


「はい」


「じゃあ、ね」


「はい、さようなら」


部屋を出て―


恭介さんの元へ…


恭介さん…


ごめんなさい。


会いたいよ。