水中から顔を上げた時みたいに息をいっぱい吸い込むようにして、勢い良く顔を上げた。

ここは?

さっきのは、夢?

それとも、これが夢?

辺りを見回し、ここが自分の部屋だと気付くのに時間は掛からなかった。

何故か、とても不安になり部屋を出て、覚束無い足取りで1階のリビングへと向かった。

テレビの大きな音だけが虚しく鳴り響く廊下に不安は募っていくばかり。

壁を伝い漸く辿り着いたリビングにはテーブルに腰掛けた母が、パソコンのキーボードの上を滑るようにしてかたかたと打ち込み仕事をしていた。

『どうしたの?』

けろっとした母の様子に胸を撫で下ろした私は母の隣に腰を下ろした。

「ちょっと、怖い夢見ちゃって・・」

静かに笑うと、母は真険な顔つきで私の額にそっと冷たい手を添えた。