としサバ

 雫は握った手に力を込めた。
 保も握り締めた手に力をいれた。



 手と手が二人を繋いだ。



 二人の心は、いま一つに繋がっていた。

 「吉岡君、海のそばに行かない」
 「いいよ」

 二人は海に向かって、手をしっかり繋いだまま走って行った。


 海岸に来た。


 保は雫を見た。
 雫も保を見た。

 二人は見詰め合って、ニコッと微笑んだ。


 手をしっかりと握り締め、二人は小さく、小さくなるまで、波打ち際を走って行った。

 
 平穏な海を一匹の大きな魚が勢いよく飛び上がり、ポチャンと海に沈んで行った。


 波紋が広がり、少しずつ、少しずつ消えて行った。




                            (了)





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