としサバ

 「なぜ、そんな事をするの」


 「だって、今野さんは僕が理由で死んで行くのに、僕だけ生きてられないよ。それに・・・」

 「それに、どうしたの」



 「それに、僕だけ生きていても意味ないし」



 雫はジーンときた。

 「ごめんね。意地悪、言って」

 雫は保の手を握った。

 保の手を通して、ほのかな温もりと、せつないまでの思いが、雫には痛いほど伝わって来た。


 保は雫の手を握り返した。

 雫の体温と異性の感触が、恥ずかしいまでに、保には伝わって来た。