としサバ

 「何の事」

 雫が保の顔を見詰めて質問をした。

 「だって、あんなに高い所から飛び下りるなんて、勇気あるよ」

 「吉岡君が下で守ってくれると思っていたから、出来たのよ」
 「網によく命中できたね」

 「上から見ると、意外と小さく見えるの。だから、内心は不安でドキドキだったよ」


 「でも、よかったよ。命中できなかったら・・・」


 保はそこで言葉に詰まってしまった。

 雫はすかさず保に尋ねた。


 「命中できなかったら、どうしたの」
 「命中できなかったら・・・」

 「どうしたの」


 「命中できなかったら・・・。あの橋の真ん中から、僕も飛び下りるつもりだったよ」


 保は内海に掛かっている甲子園浜橋を指差していた。