としサバ

 雫は自分の席に戻った。

 教室には、保がお姉さんのパンツをはき間違える以前の、平安で退屈な時間がゆるやかに流れていた。


 放課後、雫は海岸に続く石段に座って、ぼんやりと海を眺めていた。

 海は青く平穏に横たわっていた。


 保が走りながら、こちらに向かっている。

 「体はいいの」

 保は雫のそばに来るや、第一声を上げた。

 「ありがとう。大丈夫よ」
 「座っていい」

 「いいよ。一緒に海を見ようよ」
 「風がおいしいな」


 「でしよ。塩の香りが、ほんと気持ちいいよ」


 「僕、尊敬しちゃうな」


 保が雫の顔を覗きながら、感心したような顔をして呟いた。