妻に見捨てられ、子供に見捨てられ、いま最後の綱の女将にも見捨てられた。


 哀れな哀れな男が、信彦は自分だと気が付いた。



 「俺は世界一、哀れな男か」



 信彦は心で泣きながら、惨めな現実と向かい合っていた。


 (株は半分の2万株だけ、100円前後で損を覚悟で売り、生活資金の一部に当てるか)


 ふらつく頭で、信彦は考え続けた。


 (家賃を下げる為に、アパートを探さなければ・・・)


 (明日から、また就職活動を再開するか)


 信彦は力なく自分自身に呟いていた。



 「帰りに文房具店で履歴書を買わなければ」



 惨めな惨めな将来が、信彦を情け容赦無く待ち受けていた。