「あの時、メッキーとの会話で、なぜかあの少女の事が気になっていた訳が、今わかるなんて。まさか、あの少女だったとは、とんだお笑いだ」


 「あっははは、あっははは、あっははは・・・」


 そう言って、信彦は笑い転げた。


 「女狐にいっぱい食わされたか」


 「ワッハハハ、ワハハハ、ワッハハハ・・・」


 幾ら笑っても、信彦は笑いが止まらなかった。

 信彦がさくらんぼのチャットルームで会話をし、恋にも似たときめきを感じさせてくれたのは、正に女狐のたぶらかしだったとは。

 柔道の背負い投げを見事に決められた時のように、敗北感より、むしろ敵ながら天晴れ、と言う感じの方が、信彦には強かった。


 「私は死神なんかじゃない。女狐よ。メッキーよ」


 信彦には、ダイイング・メッセージになぜ小学校6年生の少女が、あの言葉を選び、あの場に及んで自分の正体を明かしたのか、謎だった。


 信彦は、この少女といい、女将と言い、前の妻といい、女とは男にはこの年になっても計り知れない、得たいの分からない怪物だと思った。


 こんなに笑ったのは、信彦は一生の内で初めてだった。