としサバ

 保は体育用具室に着くと、人だかりの方に向かって大声を張り上げた。


 「力を貸してくれー。網を出すんだ」

 「落ちる前に、網を張るんだ」


 「マットを敷き詰めろ」
 「おーい、力を貸してくれ」


 保の必死の叫びに応じる人たちが、体育用具室の前に集まって来た。


 「まず、マットだ」


 大勢の人が力を合わせて、6年A組の下辺りまでマットを運び出し、そしてそれを敷き詰めた。


 「次は網だぞ」


 何人もで網を運び出した。
 太いロープで出来た網をマットの上に、皆で力を合わせて張ってみた。


 (これでいつ飛び降りても、大丈夫だよ。後は、ここに狙いを定めてうまく飛び落ちる事ができれば、大成功だよ)


 保は心の中で呟いた。