梅田駅に着くと、信彦は先日のメッキーとの待ち合わせを思い出した。

 (メッキーは、今頃どうしているかな)

 信彦の脳裏を、一瞬メッキーの事がよぎった。


 信彦は女将をデパートの宝石売り場に連れて行った。


 「女将、土日結婚を記念してピアスをプレゼントするよ」

 「まあ、嬉しい。どんなピアスをプレゼントして下さるの」


 「女将は和服を着る機会が多いので、真珠のピアスなんかどうかな」

 「真珠のピアスか。素敵ね」


 信彦は大粒、一粒のピアスを選び、女将の耳に付けてもらった。


 「どう、いいわね」


 女将は鏡の中の自分を覘き、気に入った様子だった。

 「それにするかい」
 「ええ、気に入ったわ」

 信彦は真珠のピアスを購入し、女将に手渡した。


 「ありがとう。深ちゃんと結婚して良かった」


 女将は信彦の耳元に息を吹きかけるように小さく囁くと、お店の準備があるからと言って、そこで信彦と別れた。


 信彦はひとりでマンションまで歩いて帰った。