としサバ

 信彦は起き上がり、素早く着替えると、女将の所に行った。

 「いい匂いだね」

 味噌汁のいい香りがプーンと漂って来た。

 食卓テーブルには、紅鮭の焼き物、玉子焼き、味付け海苔、きゅうりの漬物、味噌汁、ご飯が並んでいる。


 「ご馳走だね」
 「お店の残り物でご免ね」

 「こんな朝食が食べられる女将の亭主は、幸せ者だな」



 「じゃ、深ちゃん、亭主になってみる」



 「えっ、本気で言っているの。そんな訳無いよね」


 「私は、半分、本気よ」


 信彦は女将がどういうつもりで、こんな事を言っているのか、理解に苦しんでいた。