「私この頃、眠りがすごく浅くって、眠ったか、眠ってないのか、よくわからない日が続いていたわ。だから、疲れが貯まっていたの。深ちゃんのお陰で、随分、元気になったわ」


 女将が十分に睡眠を取ったのか、すっきりした顔で言った。


「睡眠不足になったら、いつでも呼んでくれよ」
「お願いね」

 そう言って、女将は起き上がった。


 「少し、待っていてね。おいしい味噌汁を作って上げるから」


 信彦は、女将が朝食を作っているのをぼんやりと眺めていた。


 包丁を切る音とリズムを聞けば、女将の料理の腕が大体、想像が付いた。


 「出来たわよ」


 女将の可愛い声が自分を呼んでいる。