コーヒーを飲みながら勝利の余韻を味わっていると、そこに榎本が現れた。

 大の甘党の榎本は、手に黒豆大福の土産を持っている。


 「おい、儲かっているか」
 「まあまあな」

 「その顔見ると、調子が良く見えるけど」
 「前に言っていたラソタ自動車が売れたんだ」

 「幾らで、売れた」
 「8000円かな」

 「目標通りか。深見は本当に手堅いな。欲を制御できる。そこが、俺を唸らせるお前のいい所かな」

 「今、お茶入れるわ」
 「済まんな」

 そう言いながら、榎本は椅子に座った。

 「ここの黒豆大福はうまいぞ。丹波の黒豆使っているから、一度、食べてみろ。病み付きになるよ」

 「それにしても、甘いものが好きだなあ」
 「大福のことは、まあこれ位にして。それより、例の件、考えてくれたか」


 榎本が真面目な顔をして信彦に尋ねた。