「俺生徒手帳なくしたんだって」
「新しいの作らないの?」
「今すぐとか、そんな早くできる訳ねぇーだろ」
「じゃーあー、誠だけ割引なしっ!定価っ!」
「鬼かっ!!」
隣の席では、楽しそうな笑い声。
私は、机の中に手を入れたまま固まってる。
返さなきゃ。
ここから手を引き取って、渡すだけ。
私のせいで神崎くんを困らせたくない。
そう思う気持ちは本当だけど……
「半額だから、男二人にあたしと、藍の分おごらせる予定なんだからさぁー、誠来ないの超困るしー。」
「お前らなぁ」
ふたりきりで話すの、やめて。
おんなこと一緒にいちゃ、やだ。
自分勝手な葛藤が邪魔をして、机の中から手を出す事が出来ない。


