また君は嘘をつく



「耳元じゃなくてね

"耳の中"なの


きっと耳の中に誰かいるんだわ。

小さい、小さ―い誰かが。」

哲二は何も言い返すことが
できなかった

「…本当よ?哲二、

本当にいるのよ」

ただ、ただ彼は彼女の右手を
強く握りしめることしか
出来なかった。