あたしの名前は、梶原芽衣子。17歳。花の女子高生。…のはず。

あたしの朝は、ちょっとした戦争である。なんせ、家族が9人もいるのだから。

上から、長男太一。
23歳。鳶職。

長女、麻子。
21歳、バツイチ子持ち出戻り。

次女のあたしを挟んで、次男亮二。
15歳、中三。生意気盛り。

三男、規介。
10歳、小学生。破壊王。

四男、実。
9歳、小学生。泣き虫。

三女、かのこ。
4歳、園児。おませなガキンチョ。

麻子姉ちゃんの息子、空。
1歳半。赤ん坊。

そして、一家の大黒柱の父、日出雄。
46歳。家具職人。

…と言った具合に、朝からこの人数でぎゃあぎゃあ騒がれたら、たまったもんじゃない。

二年前にお母ちゃんが死んでしまってから、家族力を合わせて生きてきた。といっても、まだ小さい子供もいる梶原家。お父ちゃんと兄ちゃんが食いぶちを稼いでくれる分、家事なんかは、あたしの担当になった。

一年前に離婚したお姉ちゃんが戻ってきてからは、だいぶ楽にはなったけど。やっぱり手が掛かる年頃の空くんがいるから、家事炊事は必然的に私の仕事になっていた。

「ねーちゃん、給食袋どこ?」

「くましゃん!!」

「あ、こら!俺のおかず!!」

「うっさい、あんたたち!だまって食卓につきなさい!」

「ごちそうさま、いってくる」

「あ、行ってらっしゃい……って、もうこんな時間?!チビども、早く食べて準備しな!太一兄ちゃん!かのを保育園まで送って!」

「えー、めんどくせぇ」

「めんどくさいじゃない!遅刻しちゃうでしょ!あっ、こら規介寝るな!学校だってば」


……梶原芽衣子。17歳。花の女子高生。

花の、女子高生。

ええ、大事なことなので、二度言いました。