「お母さん、智香は?」


 スプーンの数を数えながら、さり気なくきいてみた。だけど、案の定お母さんの表情が曇った。


「知らない。どうせ、帰ってこないわ。お皿もスプーンも二つずつでいいわ」


「うん……」



 妹の智香は中学三年の時に、妊娠した。相手は当時付き合っていた高校三年の彼氏だった。

 幸せそうな顔して「赤ちゃんができたの」と言った智香に、お父さんもお母さんも言葉を失った。



 彼氏は真面目そうな人だった。髪も黒くて、有名な進学校の制服を着ていた。

 怒る両親に何度も頭を下げにきた。


「智香と結婚させてください。学校は辞めて働きます」