「玄関扉の向こうに、君みたいな高校生待たせたら、同じフロアに住む人の話題になっちゃうでしょ?」
それは、そうだけど……
「いいから、入ってよ。時間ないって言ってるじゃん」
「は、はい。すみませんでした」
謝った自分負けだ。敗北。
どうにでもなれ、と部屋に入った。
ピンクのハートの玄関マットが俺を出迎える。 女の一人暮らしの部屋なんて、初めて入る。
「さっそく借りるね」
その人は素早く俺の手から携帯を抜き取る。
ピンクのフワフワのスリッパを出すと俺の前に置いた。
これを履けと?
俺に?
ナツに見られたら一生笑い者にされるぜ。


