彼女と出会ったのは、夏休み初日。


 試験から解放されて、バスケで汗を流してナツとファミレスで飯を食った。


 夜はいつも通りに穂香と会う約束をしていた。

 実は、夏休み穂香を連れて一泊旅行に行きたいな……なんて下心抱いてた。

 雰囲気が変われば奥手な穂香にも、何か変化があるかもしれないって考えてた。

 その為に本屋へ向かうと、ナツと別れた。



 海に行くか、山に行くか。貸し切り風呂とかもいいな……なんて普通の男なら考えるだろ?

 煩悩を抱えてた俺はつい油断した。




「危なっ!!!」


 キキキッーとブレーキをかけて、なんとかセーフ。
 
 角を曲がろうとした時に、OL風のお姉さんにぶつかりそうになったんだ。


「ャッ!」


 ガシャッ!


 幸いぶつかりはしなかったものの、お姉さんは鞄の中身をぶちまけてしまった。



「スミマセン!」

 
 自転車をとめて慌て中身を拾う。


「こっちこそ、ごめんね。携帯見ながら歩いてたから……君は悪くないよ」



 財布を手渡して、彼女と目が合う。