明日から夏休み用の練習があるけれど、期末試験が終わったばかりの今日は部活はない。練習は自由だけど、体育館は開放されている。

 体育館には、同じバスケ部のメンバーが集まっていた。

 皆、本気でバスケが大好きな馬鹿ばかりだから、試験でバスケを取り上げられてて苛々してたんだと思う。俺がそうだから。


「遅い、ナツ! 隼斗!」


「隼斗が煩いから、遅くなった」


「おまえが馬鹿だからだ! ちょっとは試験の心配しろ! 卒業できなかったら、どーすんだよ!」


「はいはい……」


 煩い隼斗を無視してバッシュの紐を縛る。少しきつめに結び目をつくると、体育館の床が軋む音にすらワクワクしてくるんだ。


「パスくれっ!」


 両手から重みのある丸い球体の感触が伝わる。それを右手にもちかえて、ドリブルしながら一気に走ると頭がスカッと空っぽになる。

 試験で詰め込んだ 数式が全部抜け落ちる……この爽快感たまらないな。


 ゴールだけを目指して、ボールを軽く投げ入れる。



「ナイスシュート!」


「やっぱ、ナツのフォームは完璧だな」


「それだけの集中力が勉強にむけば満点なのにな!」


「うるせーて言ってんだろ! 隼斗!」


 蒸し暑い体育館だけど、いつもの仲間と笑い声があがる。この一時が大好きだ。