「美咲、私たち……ほら、幼なじみだから。ね? あ、杏子飴食べたいって言ってたよね? 探しにいこうか?」


「うん、そうだね」


 穂香が慌てた様子で、美咲の手をひいて人混みへと歩き出した。




「ナツ……もう少しだけ、頭使えよ。美咲ちゃんがお前のこと好きなのくらいわかるだろ?」


「隼斗が余計なこと言ったんだろ!」


「だから、頭使え! 嘘も使い方次第では、誰も傷付けないんだよ!」


 なんだその都合のいい言い訳は?



「っていうか……隼斗、この前、何やってたんだよ?」



「人助けだよ! 駅前で困ってる人助けた」


「ふーん。珍しいな。隼斗が人助けしたら十倍くらいに自分を美化して武勇伝語りそうなのに……あ、いーけど」


 前に、穂香を痴漢から守った話は三十回は聞かされた。




「俺も大人になったんだよ。ナツ、ナツも人の気持ちが読める男になれ」


 ムカつくな。 隼斗の分のたこ焼きを、二個奪って口の中へ押し込める。


「俺の分食べるな!」


「うるせー。大人なら、たこ焼きくらいで文句言うな!」


「奢ってもらった分際で生意気な口利くんじゃねーよ」


「悪かったな、口だけ生意気で!」

「口だけじゃねーんだよ!」

「いてぇっ!」


 頬を思いっきりつねられて、真顔の隼斗に頭突きする。


 誰が誰を好きだとか、付き合うとか、言葉一つ選ばなきゃならない関係なんてダルいだけだと思うけど、今の俺たちは圧倒的にそれに支配されてる。支配されすぎてる。