「じゃ、行くか。穂香、手だして」
穂香が首を傾げて右手をだすと、隼斗は自分の指をからめて、その手をひいて歩き出した。
「ちょっと、待てよ! 隼斗!」
取り残された、俺と……その隣に穂香の友達。
「あ……あの、ごめんね。私が無理に誘ったの……」
女は俯くと、胸の前で握り拳を作った。
「あの……でも、せっかくだし一緒にお祭り行かない?」
薄く化粧した目で俺を見つめると、握った拳を開いたり閉じたりしながら「嫌……だよね? ごめんね。帰りたかったら……いいよ」と謝る。
だから、女は嫌いだ。どっちを選べばいいのか迷うだろ! しかも、こんなとこまで呼び出しといて「帰れ」はないだろ!
「あのさー、一つ言っていい?」
「え……なに?」
なんか俺に悪い事でもしたのかよ? 女は怯えたように身構えた。
「隼斗たち行っちまう」
女は驚いた顔して、長い睫毛を上下させた。
「えーと、下の名前なんだっけ?」
「えっ? 美咲……あのさ、同じクラスだけど……」
「美咲ね。俺、はらへってるし。隼斗にたこ焼き奢らせる約束してんだよ。帰るなら一人で帰れよ」


