遼也さんに連れられて、普段なら絶対入らない敷居の高いレストランに来た。


「サーロインステーキに、ビールとオレンジジュース」


 注文をとりにきたウエイトレスが遼也さんの横顔をうっとりと見つめながら、はい、と小さく頷いた。

 さすが帝王。既婚者になっても、その威力は衰えない。

 それにせっかくご馳走してくれるのに、俺にメニューを決めさせてくれないところもさすがだな。



「で、おまえたち、その後喧嘩はしてないか?」


「は? 喧嘩ってなんの話ですか? 俺たち喧嘩なんてしょっちゅう……いや毎日してますけど」


「とぼけるなガキ」


 運ばれてきた瓶のオレンジジュースがなんか可哀想な俺。

 はやくビールジョッキが持てる大人の男になりたいっていうのに、いちいち棘がちくちく刺さってくる。