────「ただいま」


 おかえり、とお母さんの声がした。足早に部屋に逃げ込んで着替えをすると、塾のかばんを掴んで部屋を出た。


「お母さん、塾行ってくるね」

「送っていってあげるわ」


 いいのに……とは言えずに、テレビを消すお母さんに、ありがとう、とだけ言う。


「もう二学期ね、ほんと受験なんてあっという間に本番になっちゃう」


 お母さんが受験するわけじゃないのに、困った顔をしながら車の鍵を探されると、こっちも困ってしまう。



 高校まではずっと一緒だった隼斗とナツくんだけど、この先は多分三人ともばらばらだ。

 隼斗は理学療法士になると言って難しい大学を受験するし、ナツくんは体育大学が専門学校って言っていた。