だよね、絶対そうだと思った、と葵さんはくすくす笑う。


「中学生高校生の時は、黒縁メガネかけて広辞苑持ち歩いてたとか言うんだよ、遼也って可笑しいよね」


 遼也さんの中学生の時はよく覚えてる。

 しばらく見ない間に、髪が綺麗に染めた茶色にかわってて……腰ではいたズボン、着崩した制服、開いたワイシャツに緩く結んだネクタイにドキドキさせられた。


 ナツくんが、兄貴がグレた、って涙目になってて、なんで? 格好いいよ! って言ったらナツくん怒ったっけ……



「可笑しいけど、家族想いでいい人なんだよね……あ、ごめんね。変な話して……」


 葵さんが申し訳なさそうな顔をした。慌てて手を振る。


 乾燥機はガラガラと音をたてて、忙しなく回り続ける。



「葵さんが羨ましい……」


 本気で羨ましい。好きな人と結婚できて、こんなに大人で優しくて、綺麗な人なんだもん。