────あちぃ、と制服のブレザーを脱いだナツに苦笑いした。


 穂香は、家にいなかった。コンビニにも、公園にも、ファミレスにも、駅前のファーストフード店にもいない。

 運転手してくれたナツの分の切符も買って、駅の改札口を通る。


「穂香いるかな? 隼斗」

「わからねーよ。ナツが言い出したんだろ」


 三人で行った、あの水族館。俺は彩さんと行ったばかりだけど、もしかすると穂香は一人でそこにいるんじゃないかとナツが言った。

 あてもなく電車に揺られる。俺たちの真ん中で人一倍楽しそうにお喋りしてくれていた穂香がいない。


 本格的なイジメのターゲットになってたのか。どうして気がついてやれなかったんだろう? 穂香が俺たちに助けを求められなかったのは、俺のせいだ。


 傷ついてるよな……人一倍周りに気を使って自分の考えを押し込めてしまう性格だから、穂香は人一倍傷つきやすいんだ。


 俺とナツも自分のこととインターハイのことで頭がいっぱいだったから……だからって…………

 各駅停車はゆっくりと進む。俺の反省を一つ一つ紐解くようにゆっくりと進んだ。

 行き着いた先に穂香がいなかったらどうしよう……不安の中、開いたり閉まったりする扉にため息をついた。