────携帯の着信音を嫌いになりそう。聞き慣れたメロディーが、寝起きだとこんなにウザい。


 手を伸ばすと、クーラーのリモコンと一緒に携帯を掴んだ。


 時計を見ると午前九時。夏休みの九時は早朝だろ。常識だ。

 乱暴に通話ボタンを押してみだけど、相手には伝わらない。


『もしもし、ナツくん。おはよ』

 穂香の呑気な声が聞こえてきた。

「……なんのよう?」

 エアコンを強く設定しすぎたのか、声が掠れる。


『寝てたの? 機嫌悪そうな声!』

 穂香は楽しそうに笑ってる。


「寝てたし、眠いし……切るぞ?」


『や!……ちょっと待って! ナツくん、切るの無し! 隼斗から聞いたでしょ?』


「なにを?」


『お祭り! 今日皆で行くよ。隼斗が約束してくれたって言ってたんだけど……思い出した?』


 祭り? 約束……したっけ?


 いや、してないよな。祭りの、まの字も隼斗の口からは聞いた覚えがない。


「してない」

 

 でも、待てよ?


 そういえばアイツ昨日の練習のあとに一方的に「明日あけとけよー」って言ってたかもしれない。