────誰もいなくなった病室で、ナツが買ってきた漫画を手にとる。

 点滴の針が刺さったままの左手が煩わしい。

 こんなもんいらねーよ、大袈裟だな、と舌打ちして視線を漫画に戻す。


「ナツ、帰りましたよ。出てきたら?」


 カーテンの後ろに隠れたままの彩さんに声をかけると、かたんと小さな音をたてて顔を見せた。


「なんで隠れたんですか?」


「……べつに」


 この前、俺が彩さんの看病したから、そのお返しと、彩さんは俺がしたこと以上のことをしてくれている。

 今日なんて、仕事を早退して半日病院にこもりっきりだ。


 俺って愛されちゃってるな、って勘違いしそうになるくらい彩さんは俺の側にいてくれる。