────ベランダから煙草の煙が見えて、窓を開けて母親のサンダルにつま先を無理矢理押し込んで外に出た。

 夜になると少し肌寒い。パーカーのファスナーを上に引き上げる。


「兄貴! 試合来てただろ? 来るな、って言ったのに」


 兄貴は窓の縁に座って、細い煙を吐き出すと面倒くさそうに、あ? と答えた。


「恥ずかしがるなよ、思春期少年くん。優勝とかすげーじゃん」


 やたらと長い足を組んだまま、自分の部屋に手を伸ばすと炭酸の缶ジュースをとり、それをシャカシャカと振りだした。


「はい、優勝祝いやる。おめでとう、弟」


「あのな……飲めないだろ」


 開けたら大爆発しそうな缶ジュース片手に、こんな兄貴と話してるなら部屋に戻ってさっさと寝たほうがいい。



「いつか飲めるだろ、それ」


 よく冷えた缶を握りしめた。水滴がついた缶の中は、シュワシュワと音をたてている。