亜里沙の両手が俺の首の後ろで合わさった。


 季節はもう秋で、亜里沙の体温があったかい。


 亜里沙が背伸びして、もう一度キスしようと目を閉じた。


 でも、そんなことされても全然嬉しくない俺がいて……あの時、衝動的にしてしまった穂香へのキスは、もっともっと特別だった。


「亜里沙、やめろ」


「なんで? 私、ナツさえよければ……このあと、いいよ……」


「帰る。今日疲れてるし、また明日学校だし」


 亜里沙の手をほどいて、駅に向かって歩きだす。重いビニールバッグが肩に食い込んだ。それを亜里沙が引っ張ってるからだ。



「それがナツの答え?」

「そう……だな。多分」 



「そっか……わかった」


 亜里沙は、大人しく手を離す。ここに置いていっていいのか、少し迷ったけど、亜里沙は俯いたまま動かない。



「先に帰るぞ?」


 小さく頷いたのを確認して、亜里沙に背を向けた。