プリントを隼斗の手から奪うと、丸めて机の引き出しにいれた。


「そうか、いいよ……今日来たのは穂香の数学が心配だったからじゃない。電話でしか別れ話できてなかったから話をしに来た」


 電話で別れようと言ったのは隼斗だし、学校で私のこと避けていたのも隼斗だ。

 それなのに隼斗は全部わかってるみたいな顔してる。


 何もわかってないくせに、隼斗は私の話を聞こうという態度をした。



「話すことなんてない…………隼斗が別れようって言って私が頷いただけだよ。それで終わりでしょ」


「なんで穂香はあっさり頷いたんだ?」


「それは隼斗が悪い。バレてないと思ってるの? 私、友達から隼斗が違う女の人と歩いてる写真見せられたんだよ! 信じられるわけないじゃん。別れて当然だよ」


 隼斗は少し驚いた顔して、でも冷静に、うん、と頷いた。

 私だけがヒステリックで、私だけが未練タラタラで、それなのに私は隼斗を好きになる前にナツくんを好きになった。