────隼斗が私の部屋に来たのは、その日の夜。私たちが別れたこととか、今微妙な関係なこととか、何も知らないお母さんは隼斗を家にあげた。


「隼斗くん試合お疲れ様。勝ったのよねーおめでとう!」

 
 お母さんが麦茶をテーブルに二つ置くと、隼斗は何もかわらない笑顔で白い歯をみせてニカッと笑う。


「ありがとうございます。穂香に課題のプリント預けてたんで、それだけもらったら直ぐ帰ります」


 お母さんは隼斗の嘘に騙されて嬉しそうに笑うと、受験生だものねー、と言いながらドアは閉めずに部屋から出た。


 課題のプリントは、学校の宿題で私の大嫌いな数学のプリント。まだ半分も終わってない。


「終わってないじゃん。教えてやろうか」


 隼斗はお母さんがいなくなると、すっと笑顔を消して私のプリントに目を通す。


「いいよ、自分でやる」