未練がないわけじゃない……私は隼斗と別れたいわけじゃなかったから。隼斗と付き合った一年は、本当に夢みたいだった。


 部活帰りに隼斗がデオドラントスプレーのせっけんの香りをさせて「お待たせ、穂香」て笑う顔が好きだ。


 付き合いはじめてからは、教室の中で隼斗は少し特別になった。それまでは二人で話すのに違和感なんてなかったのに、急に恥ずかしくて、わざと皆から離れて話たり、でもそのうち二人でいるのが当たり前になった。


 休みの日に予定がないのに二人で並んで歩くのも楽しかった。




 幼なじみから、彼氏という何か特別な存在になった隼斗は大切だったし、今もすごく大切。


 ただ、それより前に、これは恋だ、と気がついてしまったナツくんへの想いだけがいつも不完全燃焼してて、でもそれは隼斗への気持ちとは全く別のところにあった。


 隼斗の好きとナツくんの好きは、全然違ったんだ。