観戦席では、「大丈夫、大丈夫」とか「ナツ! 惜しかったな!」と声があがって、盛り上がる。


 いつものナツくんなら今みたいな時は、絶対に後ろの隼斗にパスしていたはずなのに。

 応援団の真ん中には亜里沙ちゃんがいて、キラキラ光るうちわに『ナツ大好き』とペイントしたものを振っていた。


「ナツ、頑張ってー!」


 大きな声にナツくんが振り返る。和葉ちゃんたちが、キャー亜里沙みてるよ! と声をあげた。


 観戦席の隅っこに座ってる私には、別次元の世界だ。人気者のナツくん。私には手がとどかない向こう側の世界。

 前の試合の時は、私もあの辺に座って、隼斗とナツくんに堂々と声援をおくってたはずなのに。


 コーナーから投げ込まれたボールを隼斗が奪って、綺麗なフォームでシュートを決めた。


 電光掲示板が点滅して三点が加算されると、わっと割れるくらい大きな歓声があがる。



 隼斗ー、隼斗ーと隼斗コールが起こって空のペットボトルを打ちつける音が響く。