「若いっていいね、そんな風にさらりと自分の話できて……私は君に話すようなこと何もない。田舎の高校から、憧れて都会の大学に入ったけど、だらだらと過ごしてたらあっという間に社会人。田舎にも帰れないし、こっちが特別好きなわけでもないんだけどね……



「でも、こっちには俺がいるからもう田舎には帰りたくないでしょ? 彩さんの田舎ってどこなんですか?」


「教えない。だせえ、て笑うから」



 夕日が完全に水平線に消えて、紫色の空は昼と夜の境目、曖昧な色。



「いいです。教えてくれなくても、俺のこと何とも思ってなくても……でも俺は彩さんと出会えて良かったです。今けっこうどん底なんで体で慰めてくれる人が良かったです」


「高校生って、そんなくさい台詞さらりと言っちゃうんだね」


「言っちゃいました……」


「うん、でもありがとう。こっちこそ、隼斗には感謝してる」


 多分一度きりの不器用な彩さんの本音。誰かに似てると思ったら彩さんはナツに似てるのかもしれない。

 そんなこと考えたら、隣の大人な彼女が急に可愛く思えてきた。