「はい、たいしたことない怪我だったんですけど、俺意気地なしで拗ねてたんですよ。

 はやくリハビリしないと歩けなくなるって医者に脅されて、もう歩けないんだ、ってビビってたんです。

 リハビリすれば、すぐに良くなる程度の怪我でした。その時世話になった理学療法士が、バスケの漫画貸してくれたんです。

 カッコいいだろ? バスケやりたくないか? できるから、って、言ってくれたんです。それからナツていう奴がいるんですけど、毎日病院来て、いつ遊べるんだよ! って、怒るんですよ」



 彩さんは、クスクス笑いながら、俺の肩に頭を預けた。セミロングの髪からは、シャンプーの香りがする。

 歩行器を使ったリハビリは、痺れた足を引きずりながらけっこう辛くて、意気地なしの俺は毎日泣きながら母親にもうやめたいって訴えてた。


 だけど、ナツが来ると泣いてる自分なんて見せたくなかったし、理学療法士から借りた漫画一緒に読んで、こんな風なプレイがしたいとか、俺だったらこうするなんて話しながら気を紛らわしてくれたんだ。



「おかげで、この通りバスケもできて、お姉さんのセフレにもなれました」


「それって、自分をもっと大切に扱えって意味?」


「バレました?」




 大切に扱わなきゃいけないのは俺のほうだ。ナツは、ずっと友達だったのに……つまらない男のプライドみたいなもので酷いこと言ったのは俺のほう。