『へー、今時の高校生って複雑ね』


 彼女から謝罪の言葉がきけるなんて思ってないけど、自分は第三者的な発言にいらっとした。


「責任とって俺の彼女になってくれませんか?」

『あはは、冗談やめてよ! 高校生の彼氏なんて恥ずかしくって、誰にも言えないから無理』


 彩さんの笑い声は無邪気で、それが余計に苛々した。




「今からそっち行きます」


 俺はムキになって乱暴に通話を終えると、着ていたティーシャツを脱いで洗濯したてのシャツに着替えてカバンに参考書を詰め込んだ。



「隼斗、でかけるの?」


「ああ、ナツんち泊まる。あいつ数学破滅的だから教えてくれって頼まれた」


「ふーん、いってらっしゃい。あまり騒ぐと迷惑だからねー」


 母親は、テレビ画面から目をそらさずにリモコンを操作させながらたいして興味なさそうに言う。


 上の二人の姉貴がやりたい放題の高校生活おくってくれたおかげで、うちは緩いほうだ。