────亜里沙のせいで散々冷やかされて部活にいく。シューズをぶら下げて廊下を歩いてると、柱の影から美咲が飛び出してきた。


「わっ? なんだよ!」


 美咲は俺の手首を掴むと、家庭科室に入りガシャンと鍵をしめた。


「美咲! なにすんだよ! 俺、今から部活なんだけどっ」


「ごめん、ナツくん……どうしても話ときたいことがあって……お願い、他の誰にもバレたくないから静かにしてっ」


 美咲が早口の小声で必死にまくしたてるから、渋々頷いた。


「わかったよ、で何? はやくして」


「うん、ごめんね。実はさ、あの……夏祭りに行った時のことだけど」


 夏祭り……穂香と隼斗と行ったアレか、懐かしいな、ほんの一カ月前のことなのに、もうあんな風にでかけることができないのかと思うと少し寂しい。