────それだから、全て我慢していたあの夜。せき止めていたものが決壊したんだ。



「穂香……待てよ。おまえ、今すげー泣きたいんだろ?」


 涙が止まらなくなるから、やめてよ。


 せき止めたものが一気に流れだす。


「ナツくん……」


 ナツくんは、何で一番いて欲しい時にいて、一番辛い気持ちを引き出してくれるの?



「バカじゃん……こんなになるまで我慢して」


 不器用な言葉があったかい。


「バカだから、隼斗に愛想つかされたの?」

「ちげーよ。隼斗がもっとバカなだけだ」


 もう頑張りたくない。力を抜くと、ナツくんはしっかりと私を抱き締めた。



「好きなだけ泣けば」



 涙と塩味と二人が抱き合う部分が汗ばんだ。夏の夜の公園の匂い。ナツくんの優しいため息が髪にかかる。


 私、最初から素直にナツくんを好きだと言えばよかった。