─────俺の家のすぐ目の前にコンビニがある。大通りから住宅街に入った空き地に建てられたコンビニ。

 暗い道にポツンと明るいこの店は、駐車場が三台分しかないのにけっこう儲かってるって話だ。

 この住宅街に住んでる客だけでも十分なんだろうな。俺たちも、毎朝ここで隼斗と待ち合わせして朝飯買ってから朝練に行く。


「あ、ナツくんだ!」


「穂香、カラオケ行ったって聞いてたけど」


「うん、カラオケ行ってきたよ。楽しかった。隼斗の家に遊びに行く約束してたから、このコンビニで待ち合わせなんだけど……隼斗は?」


「隼斗、本屋行った。さっきまで一緒だったけど、すぐ来るよ」

「そっか、じゃもうちょっと待ってみる」


 えへへっと笑う穂香は、コンビニ前の木のベンチに座った。白いペンキが剥げたベンチ。

 この前、手に棘が刺さったからなのか、穂香は遠慮がちに浅く腰をかけている。


「そいえば、この前刺さった棘大丈夫だったか?」

「うん、隼斗のお姉さんが抜いて消毒してくれた」


「そっか。穂香、泣きそうになってたから」

「なってないよー、やめてよ。棘刺さったくらいじゃ泣かないよー」