「ねえんだよ…--」

あたしが押さなきゃこいつは何もできないのか?


それとも…

「諦めてんじゃないよ」

「…へ」

「だからあんたはいつまでもバカ何だよ…っ‼」

悔しくなって爪が手のひらに食い込むほど自分の手を強く握った。

「いってよ!」

「楓夏…?」

「いきなさいよ‼」

ポツリポツリと涙が零れてくる。
弱い自分なんて見せたくなかった。

だからいままで笑ってたのに。

どんなにつらくたって笑ってたのに


「…ごめん楓夏」

相太の視線はあたしなんか見てなかった。

靴ひもをキュっと結びなおした。

怪我したことをあまりわからないようにしていた。

「ありがとう」

そういい相太は笑顔で走っていった。



「…ばーか」

現役サッカー部は流石早い。すごい速さであたしから離れていく。


離れていく…。