「右手、出して。」



美海は、おずおずと訳もわからず手を出す。


クロッカスの花弁を美海の小さな右手にフワリと乗せる。



「これは……?」


「クロッカスの花弁。」


「何で、私に?」


「俺からじゃなくて、海斗から。」


「海斗さ…ん?」



少し、震えた声でアイツの名前を呼ぶ。


初めから、勝てるわけが無いんだよ。


名前だけで、こんなに動揺しちゃって。


海斗をこんなにも愛しているんだから。


本当に、世話の焼ける奴等。