「じゃあっ……傘だけ…渡しておきますねっ…」 悲しい表情は一変し、ガラリと笑顔を見せる美海。 でも、完全にその笑顔は作り物。 俺の手に、無理やり傘を持たせると、一礼して、背を後ろに向ける。 「美……海…!」 俺が呼ぶと、少し、美海は振り向いてまた直ぐに背を向ける。 美海の頬には雨なのか涙なのか…キラリと何かが光っていた。 俺に残ったのは、この傘1本だけ。 この傘を見るだけで美海の顔が浮かんでしまって …とても苦しいんだ。