「さあ、時間ですよ。姫乃様。」 お辞儀をしながら、ハルルが綺麗な手を差しのべる。 まだ、諦めたくないっ。 そう思っている筈なのに。 いっそ、この手にあの人の居ない世界に早く連れていって貰った方が楽なんじゃないか。 いっそ、私も記憶を消して貰った方が楽なんじゃないか。 私を拒絶する、海斗のあの表情をこれ以上見なくて済むのなら。 心の奥の悪魔が私の耳元でそう囁いている様だった。 「さあ……」 私はハルルの掌に自分の手を伸ばした。 あと、少し あと、少し。